着物を着るときに必ず出てくる「おはしょり」という言葉。
意味はなんとなく知っていても、実際にどの部分を指すのか、なぜ必要なのかまでは意外と分からないものです。
とくに着物に慣れていない方ほど、帯の下に出ている布を見て「これは何のためにあるのだろう」と戸惑ってしまいます。
作り方が分からず、着崩れの原因になってしまった経験がある方も少なくありません。
この記事では、おはしょりの意味をはじめ、着物のどの部分にあたるのか、そして初心者の方でも失敗しにくい整え方までを、順を追ってやさしく解説していきます。
最後まで読むことで、おはしょりの仕組みが自然と理解でき、着物姿がぐっときれいに見えるようになります。
おはしょりとは何か|意味と役割を最初に理解

おはしょりとは、帯の下に折り返して作る、着物のたるみ部分のことです。
女性用の着物は身丈が長めに仕立てられているため、そのまま着ると裾が床に引きずってしまいます。
そこで、腰の位置で着物をたくし上げて折り返し、余った布を帯の下に収めることで長さを調整します。
このときにできる折り返し部分が「おはしょり」です。
単に余った布を隠すための処理ではなく、
- 着丈を自分の身長に合わせる
- 腰まわりのシルエットを整える
- 着物全体のバランスを美しく見せる
といった、着姿を完成させるための重要な役割を担っています。
おはしょりがきれいに整っているだけで、同じ着物でも上品さがまったく違って見えるのはこのためです。
おはしょりはどの部分か|帯の下にできる折り返し

おはしょりは、帯のすぐ下に横一文字に現れる折り返し部分です。
正面から見ると、帯の下にもう一枚布が重なっているように見える場所があり、そこがまさにおはしょりになります。
着物を羽織った状態で鏡の前に立つと、腰のあたりで着物が一度内側に折られ、その折り山が帯の下にきれいに揃っているはずです。
この「折り山」がまっすぐ水平になっていると、着姿がすっきりと整って見えます。
反対におはしょりが斜めになっていたり、布がもたついてシワだらけになっていたり、長さがバラバラで帯の下からはみ出しているといった状態になると、全体がだらしなく見えてしまいます。
どの部分か迷ったときは、「帯の下にある横に走る布のライン」を探してください。
それが、おはしょりの位置です。
おはしょりを作る理由|着物を美しく整えるため
おはしょりを作る最大の理由は、着物の丈を体に合わせて調整するためです。
着物は洋服のように体にぴったり合わせて仕立てるのではなく、ある程度長めに作られています。
その余った長さを腰の位置で折り返して処理することで、
- 裾の長さがちょうど良くなる
- 腰まわりのシワやたるみを隠せる
- 上半身と下半身のバランスが整う
といった効果が生まれます。
また、おはしょりは体型を自然に補正してくれる役割もあります。
腰の位置で一度布を折ることで、くびれのラインがやわらかく出て、全体のシルエットがすっきり見えるのです。
もしおはしょりが無いまま着てしまうと、裾が長すぎて歩きにくくなったり、胴まわりに余計なシワが寄ってしまい、せっかくの着物姿が台無しになってしまいます。
つまり、おはしょりは単なる「折り返し」ではなく、着物を美しく着るための大切な調整機能なのです。
おはしょりの作り方|初心者でも失敗しにくい基本手順
おはしょりは、仕組みさえ理解できれば特別な技術は必要ありません。
流れをイメージしながら、一つひとつ丁寧に行うことが大切です。
まず、着物を羽織ったら、裾を床すれすれの長さまで引き上げます。
この時点では襟元が崩れていても気にしなくて大丈夫です。
ここは「長さを決める工程」なので、形は後から整えます。
次に、腰の位置で着物を内側に折り込み、余った布を下へ流します。
これが「おはしょり」となる部分です。
折り返しの位置はウエストより少し下、腰骨あたりが基準になります。
折った状態をキープしたまま、腰紐をおへその下あたりで結びます。
この腰紐が、おはしょりの形を固定する役割を持つため、きつすぎず、緩すぎずを意識してしっかり止めます。
腰紐で固定できたら、今度は襟元を整えていきます。
胸元の布を左右に引き、衿の抜き具合やシワを調整します。
この時、おはしょりの折り山が帯と平行になっているかを確認してください。
最後に全体を鏡でチェックし、
- おはしょりの高さが左右で揃っているか
- 帯の下から均等に見えているか
- シワが寄っていないか
を確認すれば完成です。
分かりやすい動画を貼っておきますね。(音が出ます)
最初は少し時間がかかっても構いません。
何度か繰り返すうちに、自然と手が覚えてきます。
おはしょりを作らない着方もある【例外】
おはしょりは女性の着物では基本の形ですが、必ず作らなければならないものではありません。
実は、最初から着丈が合っている着物や、着る人・場面によっては、おはしょりを作らずに着るケースもあります。
まず代表的なのが子どもの着物です。
七五三などで着せる着物は「肩上げ・腰上げ」という仕立てがされており、成長に合わせて縫い代で調整できるため、大人のようなおはしょりを作らない着方が一般的になります。
以下の記事で詳しく解説しています。
⇒七五三はおはしょりなしで子供に着付けて良いの?初心者向けにやさしく解説
次に対丈(ついたけ)と呼ばれる着物。
これは身長にぴったり合わせて仕立てられているため、腰で折り上げる必要がなく、帯の下に布を出さずそのまま着ます。
舞踊や式典用の着物に多い着方です。
さらに、体型や着用シーンによる例外もあります。
小柄な方や腰位置が高い方は、おはしょりを無理に作ると布が余りすぎてシルエットが崩れることがあります。
その場合はあえて短く調整したり、目立たない程度に処理することで、全体のバランスを優先する着方も実用的です。
このように、おはしょりは「必須の決まり」ではなく、着物・体型・場面に合わせて調整するための技術だと理解すると、ぐっと着付けが楽になります。
おはしょりがきれいに決まらない原因【予防】
おはしょりは意味が分かっていても、実際に着ると「長すぎる」「短すぎる」「ぐしゃっとなる」といった失敗がとても起こりやすい部分です。
これは技術の問題というより、仕組みを知らないまま形だけ作ろうとすることが原因になっています。
1.長すぎてだらんと垂れてしまうケース
まず多いのが、長すぎてだらんと垂れてしまうケース。
着丈を調整する時に、必要以上に布をたくし上げてしまうと、帯の下に収まりきらず、動くたびにずれてしまいます。
腰紐を結ぶ前に鏡で横から確認し、「帯の幅の中に自然に収まる量」だけを折り上げる意識が大切です。
コチラの記事では子供の浴衣のケースでご紹介していますが、着物でも参考になるかと思います。
⇒浴衣のおはしょりが長い時の処理方法!子供にきれいに着付けるコツ
2.短すぎてほとんど見えない
逆に、短すぎてほとんど見えないおはしょりもよくあります。
これは着物を引き上げる量が足りず、実際の身長よりも着丈が長いまま固定してしまっている状態です。
腰の位置より少し高めで布を調整し、帯の下に薄く一枚のラインが見えるくらいが目安になります。
3.ぐしゃっとシワだらけになる問題
そして一番の悩みが、ぐしゃっとシワだらけになる問題。
原因の多くは、腰紐を結ぶ前に布の面を整えていないことです。
前身頃と後ろ身頃を手のひらで軽くなでるだけでも、布の流れがそろい、帯を締めた後の仕上がりが大きく変わります。
おはしょりは一気に完成させようとせず、「長さを決める → 面を整える → 固定する」という順番を守ることで、誰でも安定した形に近づけるようになります。
まとめ:おはしょりの意味を一言で【着姿を整える要】

おはしょりとは、着物の長さを調整しながら、腰まわりを美しく整えるための折り返し部分です。
単なる余った布ではなく、体型をきれいに見せ、着崩れを防ぎ、全体の印象を引き締める重要な役割を持っています。
どの部分なのかを正しく理解し、なぜ必要なのかを知った上で作るだけで、着姿は驚くほど安定します。
最初は難しく感じても、仕組みさえ分かれば、おはしょりは「感覚」ではなく「再現できる形」になります。
ぜひ今回の内容を参考に、着物を着るたびに少しずつ、自分の中の正解を作っていってください。
【参考】


